心臓リハビリテーション
心血管疾患のための治療介入です
心臓は、全身に血液を循環させるメインポンプです。心臓の病気が長引くと、その影響は心臓だけにとどまらず全身に及びます。真に調和のとれた健康なからだを取り戻すには、手術やお薬だけでは不十分。適切な栄養のもと適度にからだを動かし休養をとる、という日々のライフスタイルが大変重要です。ハートセンターでは、リハビリテーションを「患者さまが長期にわたりその方らしい生活を送れるような“健康行動”を身につける」ための「治療介入」と位置づけています。
真の健康に近づくためには、運動だけでなく、日々の食習慣やライフスタイルを見直し、自身でからだの状態を管理する(セルフモニタリング)ことが大切。ただし、「ただなんとなく運動する」だけでは、リハビリの本当の効果は得られません。効果的なリハビリのためには、患者さま1人1人の状態を正確に把握することが先決です。ハートセンターでは、リハビリ導入時に、心機能、身体機能、栄養評価などを行い、徹底した「メディカルチェック」をもとに、適切なリハビリのプランを作成します。こうした面談や評価は定期的に行い、その効果を確認、場合によってはやり方を修正します。
心臓リハビリテーションを行う対象疾患
- 急性心筋梗塞
- 狭心症
- 慢性心不全
- 心臓術後(冠動脈バイパス術後、弁膜症術後など)
- 大動脈疾患(大血管術後、胸・腹部大動脈瘤など)
- 閉塞性動脈硬化症
- 年齢制限はありません。
- 上記の病名以外にいくつかの条件を満たす必要があります。詳細はハートセンターの外来にてご相談ください。
- リハビリ中の有害事象の割合は、0.0016%程度(約6万人に1人)と言われています。病後の間もない時期は心臓も不安定ですので、ご自身で判断することは危険です。リハビリを受けるにあたっては、必ず担当スタッフの説明をお聞きください。
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1
体力や病態に合った適切な
リハビリが大切冠動脈疾患患者で心臓リハビリテーションを実施した人は実施しなかった人に比べて、総死亡を20%減少、心死亡を26%減少させ、さらに非致死性心筋梗塞を減少させたことが報告されています。また冠動脈バイパス術後10年間にわたる長期比較試験において、心臓リハビリテーション施行群で心血管事故がほぼ半減することが示されています(1-3。 -
2
運動耐容能が増加し、
持久力、スタミナが上がります筋肉の量が増え、質も良くなり、楽に動くことができるようになります。運動能力が向上すると、心臓への負担は少なくなり、日常生活の労作における息切れなどの症状が軽減し、QOL(生活の質)が改善します。この効果は性・年齢に関わらず認められます。 -
3
自律神経機能が安定します
心疾患が長引くと、自律神経のうち、「交感神経」と呼ばれる神経の活性が過度に上がります。これは、頻脈や不整脈、高血圧、不眠につながる良くない状況です。適度な運動は「副交感神経」を目覚めさせ、その結果心拍や血圧を整え、不整脈や高血圧を予防します。また、不眠を解消し、よく眠れるようになります。 -
4
末梢血管が拡張し、
血行が良くなります運動により血管が広がりやすくなり、手足が温かくなります。体のすみずみまで新鮮な血液を運ぶことができるようになるため、筋肉への栄養補給もスムーズになり、からだを動かしやすくなります。また血管内皮を強化し、動脈硬化を遅らせると言われています。 -
5
冠危険因子(心筋梗塞のリスク)
を軽減します高血圧、脂質異常、糖尿病、肥満といった、動脈硬化のリスクファクターを改善させる効果があります。特に、心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性疾患を起こした人にとっては食事療法と併せ、再発予防に重要です。 -
6
うつ状態を改善します
心筋梗塞をきたした患者さまの4割近くが、うつ状態に陥るといわれ、また精神的ストレスは動脈硬化性疾患の状態を悪化させるともいわれています。運動療法を行うことにより、ストレスを軽減し、精神的に不安定な状態を改善します。
- 1.心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nohara_h.pdf - 2.Marchionni N, Fattirolli F, Fumagalli S, et al. Improved exercise tolerance and quality of life with cardiac rehabilitation of older patients after myocardial infarction: results of a randomized, controlled trial. Circulation 2003; 107: 2201-2206.
- 3.Hambrecht R, Wolf A, Gielen S, et al. Effects of exercise on coronary endothelial function in patients with coronary artery disease. N Engl J Med 2000; 342: 454-460.