こまめな水分補給で健康管理!日頃の心がけが大切です。
7月に入り、気温が急上昇することが予想されます。年々、猛暑が懸念される中、体調管理のための早めの対策が大切です。気温や湿度の管理はもちろん、最も身近な水分補給の正しい習慣を身に着け、熱中症対策だけでなく日頃の健康管理につなげていきましょう。
水は私たちの生命の源であり、体の中の水分不足は熱中症や脳梗塞、心筋梗塞などの健康障害のリスク要因と言われています。厚生労働省では、「目覚めの一杯、寝る前の一杯。しっかり水分 元気な毎日!」と提唱し、こまめな水分補給をすすめています1)。図1がそのポスターになり、水分補給の大切さを呼び掛けています。
体の水分量は成人男性で約60%を占め、赤ちゃんは約76%を占めるとされています。このように人間の体の多くが水分でできているということが分かりますが、その水分は特にスポーツなどをしていなくても、日常生活の中で自動的に失われていきます。
成人の安静時の平均的な水収支を図2に示しました。個人差はありますが、流入については食事から1.0L、体内から作られる水として0.3L、飲み水から1.2Lとされ、流出については尿や便から1.6L、呼吸や汗といった不感蒸泄から0.9Lとされています2)。
日常において尿や汗等の喪失量に見合う水分を適量摂取していれば、体内の水収支バランスは一定に保たれますが、水分摂取量が不足すると血漿浸透圧が上昇してしまいます。そうなると人間はのどの渇きを感じ、尿が濃縮されます。しかし、実際にはのどの渇きを感じる前にこまめな水分補給をすることが大切で、飲水以外にも食事をしっかり摂ることが重要となります。図2からも分かるように、食事から摂取している水分量は意外と多く、また摂取している栄養素が多ければ多いほどそこから作られる代謝水も増えるため、欠食せずしっかり食事を摂ることやバランスの良い食事が求められるのも納得できます。
脱水予防のための水分補給をより効果的に行うには、図3に示してあるように、水分摂取のタイミング、飲料の温度、飲料の種類を正しく選択することが必要となります。
水分補給を行うタイミングは前述したように、のどが渇く前が理想的です。ただし、一度に多量の水分を摂取するとそのほとんどは吸収されず排出されてしまい、真水の単独多飲は水中毒(希釈性低ナトリウム血症)を起こすこともあるので、頻回に摂取することが望ましいとされます。目安としてはコップ1杯程度の飲料を1日8回程度に分けて飲む2)など、こまめな水分補給です。また、子供の場合は好きな時間、のどの渇きを感じにくいとされる高齢者の場合は時間を決めたり、起床時や就寝前といった生活リズムに合わせて行うのも有効です。
日常的な水分補給の飲料の温度は、体温に近い方が吸収がよいとされており、一般的にいう“白湯”がおすすめです。しかし、十分な水分摂取が最も大切なので、水分補給が苦痛にならないよう、自分にとって飲みやすい温度の飲料を選択するのが一番です。
飲料の種類に関しては、アルコール飲料は避けましょう。アルコール飲料には利尿作用があり、アルコールが体内で分解される際にも水分を消費してしまうため水分補給には適しません。実際ビールを10杯飲むと、尿によって11杯分の水分が排出されてしまうと言われています1)。カフェイン飲料も利尿作用がありますが、日常的にカフェインを摂取している場合にはその影響は少なく、水分補給として有用だと報告されています3)。炭酸飲料や清涼飲料水も糖分の過剰摂取になりやすい面では十分な注意が必要ですが、水分補給源にはなります4)。
人間は体の水分が5%失われると熱中症や脱水症状などが現れ始め、10%失われると筋肉のけいれんや循環不全などが起こります。喉が渇いたと感じた時点で脱水は既に始まっていることを忘れず、規則正しい食事とこまめな水分補給を心がけましょう。
もっと知りたい方へ
水分は水やお茶などの液体そのものだけではなく、食品や食材にもしっかり水分が含まれています。例えば野菜や果物の水分含有量は80~90%にもなります。種類にもよりますが、野菜たっぷりの食事をすることは、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素や食物繊維などが摂れるだけでなく、体に必要な水分も補給できるということにつながります。また、主食に関しても、米や小麦は水を加えることで飯になりパンになるため、それらをしっかり食べることはエネルギーを摂るだけでなく水分も同時に摂っていることになるのです。
水分補給というと水分を摂ることに意識が向きますが、図3にもあるように、食事や食材からの水分量はあなどれません。3度の食事をすることで適度な栄養と水分の補給、いろいろな食材を口にすることでより質の高い水分の補給が可能です。そういったことからも、規則正しい食事やバランスの良い食事が求められるのにはきちんとした意味があるのです。
- *1
厚生労働省:「健康のため水を飲もう」推進運動
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html - *2
コカ・コーラサイト:脱水症(熱中症)― 正しいメカニズムの理解と適切な水分補給
脱水症(熱中症)― 正しいメカニズムの理解と適切な水分補給: The Coca-Cola Company (cocacola.co.jp) - *3
Food and Nutrition Board of the Institute of Medicine. Dietary Reference Intakes for Water, Potassium, Sodium, Chloride, and Sulfate 2004. Accessed October 11, 2006.
- *4
Johnson T, Gerson L, Hershcovici T, Stave C, Fass R. Aliment Pharmacol Ther. Systematic review: the effects of carbonated beverages on gastro-oesophageal reflux disease. 2010; 31: 607-614.