ナースBLOG Vol.5

Sさんは心不全と診断され入院されました。とてもパワフルで看護師に対してもジョークを言うような、ユーモアあふれる方でした。また、少し心配性で度々ご家族へ電話を行い、元気かどうかの確認をする姿も見受けられました。検査の結果、Sさんは先生から手術を勧められます。命の危険を伴う手術であった為、涙を流す姿もありましたが、ご家族との相談の結果、手術を決意されました。

そして、手術は無事終了し、徐々に動ける距離も伸びてきました。その日は、私が夜勤でSさんを担当した日でした。夕方の検温をおこない談笑していると、Sさんが突然意識を落とされました。すぐに、救急処置を施しながら集中治療室へ搬送。救命処置を継続しましたが、残念ながらSさんは帰らぬ人となりました。

自宅へお帰りいただく為、お身体をきれい（エンゼルケアと言います）にした後、ご家族より「こんなに綺麗にしてくれて本当にありがとう」と言葉をかけてもらいました。ご家族とお話しをしつつ、私は自分の情けなさを感じました。なぜなら、私は『いつも通りのエンゼルケア』をしていたからです。でも、Sさんにとっては、一生に1度の、ご家族にとってはかけがえのない瞬間だったのだと改めて気付いたからです。もっと、Sさんやご家族の為にできる事はなかったか、あの日のことは今も思い出します。

看護師として働くと多くの患者様と関わります。私がおこなう看護や援助は、些細な力かもしれませんが、患者様・ご家族様一人ひとりの人生に寄り添いながら、日々の出会いを大切にしながら、看護していきたいと思います。