ナースBLOG Vol.1
カテーテル室でのエピソード
カテーテル治療を終えたOさんが、私たちにかけてくださった貴重なお言葉です。
皆さまは病院のカテーテル室を、どのようにイメージされるでしょうか?
多くの医療機器に取り囲まれ、心電図などの機械音がなり響き、医師の指示が飛び交う無機質で怖いイメージをもたれる方が多いかもしれません。実際の現場では緊張感の走る場面も多々あります。急に変化する状況にも迅速に対応できるよう常に患者様やモニター類を注視し、治療に当たるスタッフ全員がアンテナを張り巡らしチームで治療に当たります。緊張感をもって治療にあたるのは勿論なのですが終始張りつめているのではなく、力を抜けるときには患者様も含めて談笑するような場面もあります。信じられないかもしれませんが、Oさんのエピソードをご紹介したいと思います。
Oさんは、動脈硬化が進み血管が石灰化といって非常に硬く石のようになっている状態で心機能は正常の半分程度に低下していました。当院では治療方針を決めるために、多職種合同で毎朝カンファレンスを行っています。Oさんの治療に関しても慎重に議論され最善の治療方針を検討しました。術前には執刀する医師が、治療方針や難しい治療であること、最悪の場合には心停止などの事態も起こり得ることなどを説明しました。
Oさんは、ご高齢ではありましたが非常に快活で理解力もあり、十分に納得されているご様子でした。術前にご挨拶に伺うと、やはり緊張された様子ではありましたが息子さんに「行ってくる」と力強くおっしゃりカテーテル室に向かいました。
カテーテル室は、大きな機械やモニター類に囲まれ医師はマスクに医療用のガウンという出で立ち。患者様にとっては、やはり「怖い」イメージがあるのではないでしょうか。さらに術前の説明もあいまって入室時の緊張感は計り知れないものがあると思います。Oさんのお返事一つ一つはハキハキしてみえましたが緊張感が伝わってきました。カテーテル治療は、全身麻酔ではないので周囲の音やスタッフの声は患者様の耳に全て入ります。意識下での治療なので痛い、つらい、苦しいなどの訴えができる状態なのですが、声をかけづらいと感じ我慢されてしまう方も多くみえます。ですので、治療が始まる前には必ず、「我慢はしないでいいですよ。声を出すことは大丈夫です。先生方は治療中画面に集中していますが、私はOさんのお顔を常に見ていますので声を出しにくかったら私に目線を向けてください。傍にいってお伺いします。」と伝えるようにしています。
Oさんの治療は石灰化病変であったためデバルキングデバイス(高度石灰化病変に対する治療器具)が採用されました。ダイヤモンドが先端についたカテーテルで石灰化のある硬い血管を切削する治療で、合併症リスクも高い手技です。術前に十分に説明がされていますが、セットアップの合間など、ひとつひとつの手技の合間に進行具合をお声掛けしながら、症状などの確認を行いました。治療中患者様ファーストは勿論なのですが、声をかけるべきタイミングなど手技の流れを十分に理解し見極めるスキルも重要となります。手技の流れを遮ることなく、執刀医がスムーズに治療できることが結果として患者様ファーストにつながると考えています。カテーテル室は多職種が協働しているため息の合ったチームワークが、安全で安心していただける治療のためには非常に大切な要素の一つであると考えます。
Oさんの治療も、胸痛の出現しやすいタイミングに手技の流れを考えながら積極的に声をおかけしました。
治療も順調に進行し、懸念された合併症も起こることなく終盤にさしかかったころ、
「ほいほい、心臓止まった?」
スタッフ、Oさん含め笑いが起きました。院長先生の登場です。
Oさんは長らく院長先生の外来にかかられており、信頼関係があるからこその冗談です。一気にOさんの表情は和らぎました。
「良かったね、上手くいったみたいじゃん。長生きしりん。」
と院長先生が声をかけると、Oさんから冒頭のお言葉を頂戴しました。
「先生の技術と、看護師さんの声掛けに救われました。」
最上級のお褒めのお言葉です。
私自身は、まだまだ技術も知識もプロフェッショナルには至っておらず豊橋ハートセンターのカテーテル室の看護師としては未熟です。しかし、患者様の心に寄り添えたと実感できた大変うれしいエピソードです。今後も豊橋ハートセンターのチームの一員として、患者様の病気だけでなく心にも寄り添えるプロフェッショナルな看護師になれるよう精進していきたいと思います。