心臓リハビリテーション部門
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2019.7.1
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中高年の「夏太り」を斬る!

「夏太り」の中高年が、最近増えています。夏痩せする人が全体の1割くらいとすると、夏太りは3割くらいに上るともいわれています。

実は、図1に示すように、日本人の平均摂取カロリーは、1975年をピークに減少しています1)。40年前に比べて実に約340kcal近く減少しています。現代人が太りすぎる原因は、決してカロリーの取り過ぎだけが原因とはいえないようです。今回は、夏太りのメカニズムに迫ります。

図1

♥ 現代特有の要因が、夏太りの原因に

夏太りの要因について、まとめてみます。

  1. 夏は、そもそも代謝が落ちる時期である
    図2に示すように、基礎代謝量には季節変動がみられます2)。夏は気温が高いため、冬ほどには体温維持のための熱産生(代謝して熱を放出すること)を必要としません。夏のからだは燃えにくい!このことを念頭に生活習慣を見直すべきです。
  2. 糖質に偏った食事が、体内の調節機能を低下させる
    夏にはそうめん、ラーメン、カレーなどの麺類や丼物のメニューが続きがち。いずれも糖質が多く、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどが少ないのが特徴です。蛋白質やビタミン類などが不足すれば、体内の調節機能が低下し、代謝能力も落ちてしまいます。
  3. 冷えた食事や飲料水が、脂肪燃焼を妨げる
    冷たい食事ばかり摂っていたり、キンキンに冷えた缶コーヒーやジュースばかり飲んでいたりすると、からだが冷えて脂肪燃焼しにくくなります。
  4. 冷房による冷えが、不調の原因となる
    冷房がからだを冷やし、基礎代謝が落ちやすくなります。冷えは血行不良やむくみも引き起こし、からだが重だるくなり、不調が続く原因となります。クーラーの効いた室内で1日中過ごす人も増えており、食欲減退どころかむしろ食が進む、という人も。動かないで食べてばかりの状態が続けば・・・結果はおわかりですね。
  5. 睡眠不足が、体脂肪を増やす
    寝苦しい夏には睡眠が不足し疲労がたまりやすくなります。睡眠不足になると、食欲抑制ホルモンであるレプチンの分泌が減少し、食欲増進ホルモンであるグレリンの分泌が促進されて、過食に陥りやすくなります。睡眠不足により成長ホルモンの分泌が減り、ストレスホルモンである副腎皮質ホルモンの分泌が増えることから、体脂肪の増加につながります。
  6. 運動不足が、代謝を下げる
    暑さを理由に運動する機会が減ってしまうのも、夏太りの大きな原因の一つです。普段歩いて通勤する習慣があっても、暑い日は車移動に変える人がいます。また日焼けや汗かきの不快感を防ぐために、夏は極力屋外に出ないという人もいるでしょう。必然的に運動不足になって体重増加の原因になり得ます。

図2

栄養バランスの乱れ、運動不足や睡眠不足が続くことによって、体内機能が正常に機能しにくくなり、代謝機能だけでなく免疫能の低下や自律神経のアンバランスなど、様々な不調を来し得ます。夏太りは、そんな不調の一面にすぎません。

もっと知りたい方へ

“夏メタボ”を防いで、心血管リスクを減らしましょう

Aさんは58歳、身長176cm、体重95kgと、メタボ体型の会社役員。早朝出勤のため朝食は食べず、昼食は片手で食べられる菓子パンのみ。夏になると、安くて手軽なざるそばやそうめんなどの麺類が多いようです。会食は月に2回ほど。基本夕食は家で食べますが、夜遅く帰宅した日など、疲れてそのまま寝てしまうこともしばしば。慢性的に寝不足で、運動する暇も余力もありません。ご家族はむしろ、食事が少ないことを心配しています。ところがAさん、昨年の夏にはさらに3kgも太ってしまいました。このままではメタボリック症候群、ひいては心血管リスクを高めることに繋がりかねません。今年こそは“夏メタボ”しないために、どうしたらいいでしょうか。

■ “夏メタボ”の原因は、栄養不足にあった

Aさんのように欠食が多く、少ない摂取エネルギーでの生活を続けていると、からだは飢餓状態と判断して、「省エネモード」に切り替わります。次にいつ栄養が入ってくるかわからないので、なるべく代謝を落とし、燃焼を抑えて脂肪を蓄えようとします。それほどたくさん食べていないのに痩せないということは、この省エネモードに入ってしまった証拠かもしれません。また、回数が少ない分、1回に高カロリーの食事をとりがちになって血糖値の変動が起きやすくなります。極度の空腹感をつくらないこと、代謝が落ちる夜遅くには摂りすぎないことが大切です。また、ざるそばやそうめんなど単品の麺類や丼物は一見低カロリーに見えますが、栄養バランスが糖質に偏ってしまっています。多くの麺類や丼物は塩分も多く含み、むくみの原因となります。

■ 夏は基礎代謝が低下する!“夏メタボ”の予防とは

燃えにくい夏のからだを少しでも燃やすため、生活習慣を見直しましょう。

  1. 麺類や丼物に頼らない
    糖質は体脂肪の増加に、塩分過多はむくみに繋がります。多くても1日1食にして、なるべく肉、魚や野菜などのおかずがバランスよく組み合わさった定食系を選択しましょう。
  2. ビタミンB1・カリウムを多めにとる
    ビタミンB1は糖質を分解してエネルギーに変える働きがあります。豚肉やウナギなどに多く含まれ、疲労回復にも効果的と言われています。また、カリウムはアボガド・バナナ・大豆製品・にんにく・ニラなどから摂ることができ、血行改善を促しむくみを予防します。
  3. 冷えた食事や飲料水はほどほどに
    なるべく温かいメニューも取り入れるよう心がけましょう。清涼飲料のうち、盲点はスポーツドリンクで、意外に糖質や塩分を多く含むものがあるので、注意しましょう。
  4. なるべくお湯につかる
    冷房は熱中症を予防するため適切に使用することが推奨されますが、冷やしすぎに注意。羽織る物なども上手に使いましょう。また、暑い時は入浴が億劫になりがちですが、半身浴でも足湯だけでも、ぬるめのお湯に浸かるようにすると、自律神経の乱れも防げます。
  5. 良質な睡眠のための工夫を
    睡眠不足により副腎皮質ホルモンの分泌が増えることから、体脂肪の増加につながります。質の良い“肥満”という病態を防止するのにも効果的です。冷房を適切に使用するなどして乗り切りましょう。
  6. 運動する時間を意識して確保
    夏は冬に比べて基礎代謝が低いので、その分、身体活動や運動によって代謝をあげたいところですが、夏は極力屋外に出ないという人もいるでしょう。必然的に運動不足になって体重増加の原因になり得ます。涼しい時間帯や場所を選び、意識してからだを動かすようにしましょう。運動中も運動後もこまめな水分補給を心がけましょう。ただしスポーツドリンクは、塩分や糖分が多く含まれているものもあるため、特に高齢者や心血管病のある人は“要注意”です。

参考文献:

  1. 厚生労働省 平成29年「国民健康・栄養調査」
  2. 島岡 章ら.基礎代謝の季節変動について.日本生気象学会雑誌.1987 年 24 巻 1 号: 3-8頁

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