TREATMENT

疾患ごとの
診断と治療
疾患ごとの<br>診断と治療

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TAVI / 大動脈弁狭窄症のカテーテル治療

TAVI Transcatheter Aortic Valve Implantation
経カテーテル大動脈弁留置術
TAVI は、胸を開かず、心臓が動いている状態でカテーテルを使って人工弁を患者さまの心臓に人工弁を留置する治療法です。心臓弁膜症の1つである大動脈弁狭窄症という病気はもともと治療手段が外科的に胸を開ける開胸手術しかありませんでした。しかし、この治療法TAVIは、高齢などの理由で外科的手術を諦めざるを得なかった方に対する新しい選択肢となりました。
症状
大動脈弁狭窄症とその症状
図1

大動脈弁狭窄症とは、さまざまな理由により大動脈弁(図1)が硬化し、右図のように十分に開かなくなる病気です。 大動脈弁は、心臓から血液を送る入り口にあたるため、弁の硬化により狭くなったところを無理に血液が流れることで心臓に負担が掛り、狭心症のように胸が痛くなったり、失神したり、心不全になるなどの症状を呈すようになります。 以下のような症状があったらご相談ください、大動脈狭窄症かもしれません!

主な症状
短い距離を歩くのが困難、脈拍が上がりやすい、足首の腫れ、息苦しさ、失神、めまい、動悸、息切れ、疲労感
治療
外科的手術

長期成績的にも確立されている、現在日本における第一選択。全身麻酔・人工心肺を要する手術

保存的療法

軽症の場合は、薬で症状を緩和したり、経過観察を行う

TAVI
2013年10月に保険診療の承認が得られた比較的新しい治療法。
外科的手術が困難な患者さまの選択肢のひとつ
TAVI に使用される人工弁 (SAPIEN XT)

カテーテル(細い管)を用いて足の付け根の動脈(経大腿アプローチ)または心尖部(経心尖アプローチ、左胸の下)から挿入し、十分に開かなくなった大動脈弁の上に留置(置いてくること)されます。外科手術は病気の大動脈弁を取り除いて、新しいものと置き換える治療法に対して、カテーテル治療の場合は、古いものを下敷きにして、新しい弁を留置するという点で違いがあります。

TAVIの3つのメリット
1

体への負担が少ない

胸骨切開、心臓停止、大動脈切開、人工心肺、全身冷却といった特殊な操作がないため、手術後の痛みや心臓への負担、出血を少なくすることが期待できます。
2

入院期間の短縮

体への負担を少なくすることにより、早期の退院や日常生活への復帰が期待できます。
3

治療の選択肢が増える

これまで年齢や体力、過去の心臓手術のご経験、臓器の障害(肝臓、心臓、呼吸)、または悪性腫瘍などが原因で、従来の心臓手術を受けられなかった方も治療が受けられる可能性があります。
TAVIの対象となる方

下記条件に該当しても、現時点では TAVI 治療の適用にならない場合もございます。

ご高齢の方(80歳以上)

肺気腫などの呼吸器疾患を合併している方

頸動脈狭窄を合併している方

冠動脈バイパスグラフトなどの開胸手術の既往がある方

肝硬変などの肝疾患を合併している方

胸部に放射線治療歴のある方

年以上の予後が期待出来る悪性腫瘍などの悪性疾患合併がある方

特徴
当院における TAVIの特徴
  • 熟練した指導医が在籍し、内科・外科協力して手技を行なっている。
  • 入院から退院まで1週間程度。手技から3日で退院。
  • 手術時間が約1時間程度であり、一般的な施設と比べて短い。
  • 患者さまの負担の少ない手技を心がけている。(TF場合)全身麻酔ではなく、局所麻酔である。カテーテル挿入部は切開でなく、穿刺で行なっている。
  • 心臓専門病院のため、心臓治療に熟練したコメディカルスタッフの協力が得られる。
実績と年齢分布
治療実績
治療実績
年齢分布
年齢分布
来院から退院のまでの1週間の流れ
FAQ(TAVIに関するよくあるご質問)
Q
TAVIまでの流れを教えてください。
A
外来→各検査→ハートチームカンファランス→TAVI入院となります。
Q
どんな合併症がありますか?
A
大きなきな合併症は死亡、心筋梗塞、脳卒中、弁輪破裂、左心室破裂、カテーテル弁の移動、急性大動脈弁閉鎖不全症(結果として急性心不全)、血管損傷(動脈解離、破裂)、房室ブロック(永久ペースメーカー)などがあります。これらの事態には迅速で対応する必要があり、場合によっては緊急で開胸術や開腹術(血管損傷の場合)に移行しなくてはならない場合もあります。この治療が誕生した当初は合併症の率が高かったですが、デバイスの改良、経験の蓄積により、年々成績が改善しています。アプローチ部位、施設や地域、施行された年代によりヨーロッパやアメリカ、日本でレジストリ研究や治験の結果から、術後30日間の死亡率は約5%まで改善しています。日本では昨年10月より保険償還されていますが、現在(2014年8月)までに600例以上の患者さんがこの治療を受けており、未だ少数例ながら、30日死亡率は1%程度となっています。
Q
治療による痛みはありますか?
A
治療は全身麻酔で行われる場合は痛みを感じることはありません。治療後にカテーテルを挿入した足の付け根に不快感があったり、傷口の痛みが残ったりすることがあります。全身麻酔の場合は術後にのどに違和感をおぼえたりすることがあります。これらは数日から一週間でおさまります。局所麻酔で行う際にも局所麻酔以外にも鎮静剤(睡眠剤)を用いて術中は軽くウトウトした状態で寝て頂くことが多いです。
Q
透析患者は受けられないと聞きましたが?
A
現在日本では残念ながら保険適応外となっております。今後の適応拡大が望まれます。
Q
治療後にMRI検査は可能ですか?
A
経カテーテル生体弁は磁性がありませんので問題ありません。
Q
入院期間はどれくらいですか?
A
順調に経過した場合はTAVI後3−5日以内に退院されることを目標にしております。ただし、患者さんによってはリハビリが必要なこともありますので、TAVI前後にリハビリチームが介入し、敵越なリハビリプランを立ててリハビリ後退院の予定となります。
Q
治療後に内服する薬はありますか?
A
治療後半年間は2剤(チエノピリジン系薬、アスピリン)の抗血小板療法が必要となります。その後は1剤を医師の指示のもとに応じて服用となります。
費用

2013年10月よりTAVI 治療が健康保険の適用となりました。さらに、高額療養費制度をご利用いただくことで、費用の負担を軽減することが可能です。

健康保険を使用される場合 70歳未満の方 180万円(3割負担)
70歳以上の方 44,400円(所得により、異なる場合があります)
高額療養費制度を利用する場合 70歳未満の方 年収 約1,160万円以上の方 約30万円
年収 約770万円〜1,160万円の方 約22万円
年収 約370万円〜770万円の方 約14万円
年収 〜約370万円の方 57.600円
住民税非課税の方 35,400円
70歳以上の方 44,400円(所得により、異なる場合があります)

ハートチームからメッセージ

Message
日本の医療に少しでも貢献したい

みなさん、こんにちは。豊橋ハートセンターで構造的心疾患に対する治療を担当させて頂いております山本真功(まさのり)と申します。

構造的心疾患とは、聞きなれない言葉だと思うのですが、心臓弁膜症や、先天性心疾患という病気によって、引き起こされる心臓病を大きくまとめた表現です。特に大動脈弁という心臓の出口が悪くなる病気に対してをカテーテルで治療するという方法は、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)と呼ばれています。ステントと呼ばれるものに生体弁を取り付けて、カテーテルという道具を使用して大動脈弁に取り付けます。使用することができる治療器具は2種類あり、私はいずれの治療方法も指導医の資格を有しております。フランスでこの治療を学び、日本の医療に少しでも貢献したいと考えております。

365日、24時間体制で、緊急の患者さまにも対応することが可能な体制ができています。病気でお困りの患者さまがいらっしゃいましたら、是非とも豊橋ハートセンターにご相談下さいませ。