構造的心疾患(SHD)
構造的心疾患(SHD): TAVI / ASD / PDA
TAVI

大動脈弁狭窄症に対する最新治療 TAVI ~経カテーテル大動脈弁留置術~

本邦では、2013年10月に経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が保険償還され、当院でも2014年1月に中部地区で最初の施設認定を受け、本格的に治療を開始致しました。

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)とは?

「TAVI」とは Transcatheter Aortic Valve Implantation の略語で、「経カテーテル大動脈弁留置術」と訳されます。TAVI は、胸を開かずに、心臓が動いている状態で、カテーテルを用いて人工弁を患者様の心臓に装着する治療法です。心臓の弁が上手く機能しなくなる「大動脈弁狭窄症」の患者様で、高齢などの理由で外科的な手術が困難な方に対する新しい治療の選択肢となります。

大動脈弁狭窄症とは?

さまざまな理由により大動脈弁(図1)が硬化し、十分に開かなくなる病気です。大動脈弁は、心臓から血液を送る入り口にあたるため、弁の硬化により狭くなったところを無理に血液が流れることで心臓に負担が掛り、狭心症のように胸が痛くなったり、失神したり、心不全になるなどの症状を呈するようになります。

狭窄とは?

弁が開いているときの状態


正常

狭窄

大動脈弁に動脈硬化と同じような変化が起きて硬くなることで、弁の開きが悪くなり、血液の流れが妨げられている状態です。

TAVI 治療方法

カテーテル(細い管)を用いて足の付け根の動脈(経大腿アプローチ)または心尖部(経心尖アプローチ、左胸の下)から挿入し、十分に開かなくなった大動脈弁の上に留置(置いてくること)されます。外科手術は病気の大動脈弁を取り除いて、新しいものと置き換える治療法に対して、カテーテル治療の場合は、古いものを下敷きにして、新しい弁を留置するという点で違いがあります。

TAVI に使用される人工弁 (SAPIEN XT)
足の血管からの治療(経大腿アプローチ)
胸壁からの治療(経心尖アプローチ)

対象となる患者様は?

症状を伴う重症の大動脈弁狭窄症があり、下記に該当する外科的手術が困難な患者様です。

  • ご高齢(概ね80歳以上)の患者様
  • 過去にバイパス手術などの開胸手術をしたことがある方
  • 胸部の放射線治療を受けたことがある方
  • 肺気腫などの呼吸器疾患のある方
  • 肝硬変などの肝疾患合併のある方
  • 悪性疾患合併のある方(1年以上の予後が期待できること)

上記条件に該当しても、現時点では TAVI 治療の適用にならない場合もございます。

ハートチーム

TAVI 治療は、カテーテル治療専門医(主に循環器内科医)、心臓血管外科医、麻酔科医やその他コメディカルなどのグループ「ハートチーム」が患者様にとって最適と思われる方法を選択し治療を行います。

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ASD

心房中隔欠損について〜心房中隔欠損のカテーテル治療〜

心房中隔欠損とは、左心房と右心房を仕切る心房中隔に欠損孔と呼ばれる穴が開いている疾患です。

通常、心臓から肺に送り出される血流量と心臓から動脈を通り全身に送り出される血流量は等しくなります。この疾患の場合、欠損孔があるため左心房から右心房へ血液が流入し、右心系(右心房、右心室、肺)の血流量が増加します。

そのため右心系の負担が増え、肺がうっ血した状態になります。この結果、疲れを感じやすい、息切れしやすい、正常な成長が妨げられる、風邪や肺炎などの呼吸器感染症にかかりやすくなるなどの症状があらわれます。また欠損孔が大きい場合、心不全ヘ進行することもあります。

重症の場合、新生児や乳児期に症状があらわれ、手術が必要となります。しかしほとんどの場合、成長するまで自覚症状がなく(または軽く)、その症状は患者さんによって異なります。新生児期に症状があらわれない場合でも、年齢を増すごとに動惇や息切れ、心房細動などの症状があらわれ、治療が必要となります。

また、長期にわたって肺へ過剰な血液が流れ込むため、肺高血圧症の危険性もあります。

心房中隔欠損のカテーテル治療

治療には、アンプラッツァー心房中隔欠損閉鎖システムを使用します。

アンプラッツァー心房中隔欠損閉鎖システムの構成

オクルーダーとデリバリーシステムにより構成されています。

オクルーダー(以下閉鎖栓)

心房中隔欠損を閉鎖します。

閉鎖栓は、ニッケル・チタン合金(ニチノール)製の細いワイヤーをメッシュ状に編みこんだ傘のような構造となっています。

適応

アンプラッツァー心房中隔欠損閉鎖システムは、閉鎖栓を経皮的に胸部を切開することなくカテーテルを用いて心房中隔欠損を閉鎖するために医療機器です。このシステムを用いた心房中隔欠損の閉鎖治療は、一般的に以下の患者さまが対象となります。

  • 超音波画像(心エコー)検査によって心房中隔欠損が確認された方
  • 右心室への過剰な血液流入の臨床的根拠(右心室の容量負荷)が認められる方

治療について

治療は心臓カテーテル室で行われます。X線装置、超音波心エコー装置(経食道心エコー装置)で心臓を観察し、心電図で心拍を看視します。

治療の全行程は全身麻酔の下で行われます。麻酔による不快感はありません。

心血管造影用カテーテルを大腿静脈から挿入し、下大動脈を通って心臓まで進めます。右心房、右心室、肺動脈、左心房、左心室のそれぞれの圧と血中の酸素飽和度を測定します。続いて心臓血管造影を行って心房中隔欠損の大きさを測定、撮影します。

適切なサイズの閉鎖栓をデリパリーケーブル(閉鎖栓取り付け機能を有する専用の細いワイヤー)に取り付け、デリパリーシース(閉鎖栓を運搬する細長い力テーテル)に挿入して心房中隔欠損まで運び、閉鎖栓で、心房中隔欠損を挟み込んで、閉鎖します。

閉鎖栓の位置が適切であり、欠損孔の閉鎖が確実であると判断されたら、閉鎖栓をデリパリーケーブルから離脱します。デリパリーシステムと経食道心エコーの探触子(プローブ)※ 1を抜去して治療は終了です。治療は、数時間で完了します※ 2

※ 1 :探触子(ブロブ)…超音波発信機

※2 :患者さんの容態、心房中隔欠損の大ささや位置など、個々の患者さんの状態によって異なります。詳しくは主治医にお尋ね下さい。

カデーテル治療の概要

大腿静脈よりデリパリーシースを挿入し、右心房側より欠損孔を通して、左心房へアプローチします。
左心房にあるカテーテルの先端まで閉鎖栓を進め、左心房側のかさを開吉ます。
閉鎖栓の中心部まで広げ、欠損孔に近づけます。
閉鎖栓中心部を欠損孔の位置に合わせます。
右心房側のかさを聞きます。
閉鎖栓が確実に留置されたことを確認した後、接続を解除し治療を終了します。

治療後

麻酔から醒め一定時間ベッドで安静にした後、起き上がって歩くことが可能となります(医師の指示に従ってください)。経食道心工コー装置を使用しますので、治療後にのどに痛みが残ることがありますが、数日で軽快します。経過が順調であれば、数日間入院した後、退院となります。治療後は(もしくは治療前より)血液のかたまり(血栓)がでさることを予防する薬(アスピリンなど)を約6ヵ月間服用します。

退院前には胸部×線検査および超音波心エコー検査などを行います。この検査は治療後、定期的に外来で実施します。

心房中隔欠損の力テーテル治療は、開胸手術に比べて患者さんの負担が少ないため、短期間で回復することが可能です。

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PDA

動脈管開存症について〜動脈管開存症のカテーテル治療〜

動脈管開存症とは、心臓から肺へ血液を送る肺動脈と心臓から全身へ血液を送る大動脈が、細い動脈管によってつながっている疾患です。

動脈管はもともとお母さんの胎内では開いており、生後自然に閉じるのが一般的です。

ところが、動脈管が生後自然閉鎖せずに肺動脈と大動脈がつながったままの状態になると、血圧が高い大動脈から肺動脈の方に血液が流れ込むようになってしまいます。

その結果、肺動脈に流れる血液量(肺血流量)は増加して、心臓(特に左房と左室)は拡大し、多呼吸や陥没呼吸など呼吸が苦しくなり、体重増加が不良となってしまいます。

肺血流量の増加が多くなると、肺動脈圧も上昇し、肺高血圧を生じて心不全に陥る危険性もあります。

動脈管が小さくても心雑音が聴こえる場合には、大動脈から肺動脈に流れ込む血液は少ないですが、抜歯などをきっかけに「感染性心内膜炎」という病気になる危険性もあります。

このような場合には、動脈管を閉じる必要があります。

動脈管開存症の治療方法について

動脈管開存症に対する治療には、患者様の年齢や動脈管の形と大きさによって、現在下記の5つの治療法から治療が選択されます。

外科的手術

  • 心臓外科治療
  • 胸腔鏡による閉鎖術
  • 胸腔鏡下閉鎖術

カテーテル治療

  • アンプラッツァー動脈閲存閉鎖システムを用いた閉鎖術
  • コイル閉鎖術

治療法の選択においては、一番小さな直径が2mm 以下の動脈管では、コイル塞栓術が選択されることが、多く、直径2mm 以上の動脈管の場合は、アンプラッツァー動脈管開存閉鎖システムによる閉鎖術か外科治療の適応となります。

ただし、心雑音が聴取で、きないような非常に小さな動脈管は閉鎖する必要がありません。

アンプラッツアー動脈管聞存閉鎖システムの構成

オクルーダー(以下閉鎖栓)とデリパリーシステムにより構成されていて、デリパリーシステムにより閉鎖栓を運び、動脈管開存を閉鎖します。

閉鎖栓はニッケル・チタン製の細いワイヤーをメッシュ状に編みこんだ構造となっています。

ニッケルチタンは形状記憶合金超弾性舎金と呼ばれる金属で、冠動脈ステント、血管フィルターをはじめ様々な医療機器の材料として認知されています。またメガネフレームや携帯電話のアンテナなどにも使われ、私達にとって身近な金属です。

適応

アンプラッツァー動脈管開存閉鎖システムは、閉鎖栓を経皮的に胸部を切開することなくカデーテルを用いて動脈管を閉鎖するための医療機器です。このシステムを用いた動脈管開存の閉鎖治療は、一般的に下記の患者様が対象になります。

  1. 心エコーやCTなどの画像検査により動脈管開存症と診断された方
  2. 生後6カ月以上、体重6kg以上であること
  3. 動脈管の最小径が2mm以上12mm以下であること
  4. 大動脈縮窄症など動脈管閲存以外の外科治療を必要としない方

治療について

治療は心臓力テーテル室で、行われます。X線装置で、心臓を観察し、心電図モニターで、心拍を監視します。

鼠径部(足の付け根)から大腿静脈を穿刺し、シースと呼ばれる力テーテルを挿入できる管を入れます。心臓力テーテル検査で、大動脈の造影を行い、動脈管の形を映し出し、動脈管のサイズを測定します。測定結果をもとに適切なサイズの閉鎖栓を選択し、デリパリーケーブル(閉鎖栓取り付け機能を有する専用の細いワイヤー)に取り付け、デリパリーシース(閉鎖栓を運搬する細長い力テーテル)に挿入して動脈管まで運び、閉鎖します。

閉鎖栓の位置が、適切で、あり閉鎖栓が、確実に動脈管に留置できたと判断されたら、閉鎖栓をデリパリーケーブルから離脱します。

デリパリーシースを下行大動脈まで進める。
大動脈側のかさを閲吉ますロ
デリパリーシースを引き戻し、動脈管に閉鎖栓在留置する。
閉鎖栓が確実に留置したことを確認後、接続を解除し治療を終了します。

治療の禁忌

以下のいずれかに該当する場合、アンプラッツァー動脈管開存閉鎖システムを用いた閉鎖術は受けることができません。

  • 術前1 ヶ月以内に敗血症などの重症感染症を発症した場合。ただし感染症完治後であれば閉鎖術を受けることが可能です。
  • ニッケルアレルギーがある場合、ニッケルアレルギーの可能性がある場合。
  • 治療で改善できない肺高血圧がある場合。(アイゼンメンゲル症候群の場合)

副作用または合併症

アンプラッツァーによる動脈管閉鎖システムを用いた治療では、一般的に行われている心臓力テーテル(検査)法でおきる可能性がある有害事象に加えて、この治療に特有な有害事象がおきる可能性(閉鎖栓の脱落や肺動脈や大動脈弓の狭窄など)があります。このような場合には、特殊な力テーテルで脱落した閉鎖栓の回収や外科的手術による治療が必要となる場合もあるため認定施設で実施することが、必要です。

治療後

動脈管開存症の力テーテル治療は、開胸手術に比べて患者様の負担が少ないため、短期間で回復することが望めます。一定時間ぺッドで安静にした後、起き上が、って歩くことができます(医師の指示に従ってくたさい)。経過が順調であれば翌日または数日で退院となります。

閉鎖栓が動脈管に安定するまでの約1 ヶ月間は運動を避けてください。胸部を強打したり、転んだり、ボディーコンタクトのあるスポーツを行なったりした場合、閉鎖栓がはずれ、外科手術によって取り出すことが必要となる場合があります。

また治療後3ヶ月間は感染性心内膜炎の予防が必要です。

退院前には胸部×線検査および超音波心工コー検査などを行います。医師の指示により、退院後も一定期間は、定期的な経過観察を行う必要があります。